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第85回研究例会

植民地主義と朝鮮・韓国の口承文芸

2024年3月3日(日)に Zoom で開催されます

下記のように、日本口承文芸学会・第85回研究例会を開催いたします。万障お繰り合わせのうえ、ぜひご参加くださいますようお願いいたします。

日時:2024年3月3日(日)13時30分~17時30分
○ZOOM(ズーム)によるオンライン形式(パソコンやスマートフォンでインターネットに接続するオンライン会議形式)で行います。

☆招待URLは、こちらの「会員限定ページ」に記載してあります。
※日本口承文芸学会員には「会員限定ページ」に入るためのユーザー名とパスワードを郵送済みです。


内容:


〇 登壇者と発表テーマ

パネリスト 

朝鮮の野談を書いた日本人―『朝鮮 野談・随筆・伝説』から―
                   東京学芸大学名誉教授 石井正己(司会兼)
朴英晩の昔話調査と『朝鮮伝来童話集』(1940年)収録童話の文芸性                            龍仁大学校副教授 權赫來
在日朝鮮人作家、李錦玉の再話「三年とうげ」をめぐる口承性の問題
                          立教大学兼任講師 金広植

通訳 崇実大学校非常勤講師・韓国研究財団学術研究教授 趙恩馤
コメンテータ 北海道大学准教授 丹菊逸治
       慶應義塾大学教授 熊野谷葉子

共催 国際会議委員会
後援 韓国・龍仁大学校アジア文化研究所

〇 発表要旨

朝鮮の野談を書いた日本人―『朝鮮 野談・随筆・伝説』から―
石井正己(いしい・まさみ、東京学芸大学名誉教授)

 かつて「植民地主義と口承文芸研究」(『口承文芸研究』第33号、2010年)で、口承文芸研究は植民地主義と無関係ではなかったのに、戦後はそれを不問に付して研究が進められたことを批判した。その後、日本の植民地支配に合わせて台湾、朝鮮、南洋群島、満州、インドの昔話集を分析し、教科書編纂とつなげるかたちで研究を展開した。それらについては逐次報告書を残し、金広植訳による『帝国日本の刊行した説話集と教科書』(韓国・民俗苑、2019年)が韓国語で出版されている。このたび、韓国との国際会議を行うにあたって、私自身は昔話から口承文芸に視野を広げたいと考え、野談を取り上げることにした。野談については、野崎充彦が『朝鮮の物語』(大修館書店、1998年)で、李朝時代の漢文の物語集として位置づけた。しかし、森川清人編『朝鮮 野談・随筆・伝説』(京城ローカル社、1944年)では、民間の口碑としても野談が伝えられてきたことを述べている。その際にまず取り上げたのは、警察官として植民地支配に関わりつつ民俗調査を行った今村鞆(1870~1943)だった。そこで、この本を入口に朝鮮の野談の世界を考えることによって、口承文芸の再認識を図りたいと考えた。

 

朴英晩の昔話調査と『朝鮮伝来童話集』(1940年)収録童話の文芸性
權赫來(クォン・ヒョンネ、龍仁大学校副教授)

  花溪 朴英晩(1914~1981)は、1930年代に主に活動した韓国の伝来童話作家である。朴は、30年代に日本の早稲田大学英文科を中退し、30年代初めから40年までは全国各地で昔話を収集し、『朝鮮伝来童話集』(漢城:學藝社、1940年)の出版を通じて韓国・朝鮮昔話の形成に貢献している。1940年から1945年までは中国に亡命し、重慶臨時政府の下で光復軍中佐として軍功を建て、解放後1960年代末までは光復軍小説を執筆するなど小説家やドラマ作家として活動している。『朝鮮伝来童話集』は、最も韓国的で文学的価値の高い初期の昔話集と評価される。全体的に物語の完成度や形象化の水準が高く、文章のなかで口語体と対話体が自然に活用されている。発表者は、収録作品の特徴、作家としての個性と伝来童話創作の手法について論じたい。

 

在日朝鮮人作家、李錦玉の再話「三年とうげ」をめぐる口承性の問題
金広植(キム・カァンシク、立教大学兼任講師)

 櫻井美紀をはじめ、大島広志、小池淳一、野村純一など数多くの論者が口承と書承を含めたメディアとの永い交渉史について論じ、近年は『読み書きの民俗学』(渡部圭一、吉川弘文館、2023年)や『読み書きの日本史』(八鍬友広、岩波新書、2023年)が刊行されている。東アジアは長い文字文化の中で営まれ、活字離れが叫ばれるスマフォ時代でも形を変えて維持されている。しかし、韓国の口碑文学・日本の口承文芸研究者の「一部」は、近代メディアとかけ離れた「純粋な口承」を「想像・創造」し、それを目指してきた側面がなくはないと思われる。そのような考えは、再話者にも「大きな」影響を与えているのではないだろうか。
 本発表では、「純粋な口承」への重圧や想いのなかで、李錦玉(リ・クムオギ、1929~2019)の「三年とうげ」(光村図書の小学校国語教科書に1992年から今日まで収録され続けており、日本で最も有名な朝鮮の昔話)の伝承や記録をめぐる、誤解と誤読の歴史を自省的に考察してみたい。

 

〇 参加方法

以下の①または②により招待URLの情報を入手して、ZOOMで参加してください。

①「会員限定ページ」に記載の “招待URL” をクリックしてください。
「会員限定ページ」のユーザー名とパスワードは、事務局から郵送した資料(研究例会案内)に記載してあります。

②学会事務局のメールアドレスに招待URLを返信するよう依頼のメールを送ってください。
ただ、個別対応のため時間がかかりますので、できるだけ①の方法でご参加ください。

※パネリストの用意した資料は当日ZOOM経由でダウンロードしてください。

※非会員の方にこのシンポジウムを周知なさる際、「会員限定ページ」のユーザー名・パスワードについては伝えずに、「会員限定ページ」にてご自分が入手した「ZOOMの招待URL、ミーティングID、パスコード」のみを通知して参加してもらってください。非会員の方々が直接学会事務局にメールを送信されると、上記したように時間がかかり、開催時間に間に合わないこともありますので、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。ただし、各自が非会員を研究例会に招待する場合、通知したい人のみにメールで招待URLを送信し、不特定多数がアクセスできるようなホームページやブログ、SNSなどに貼り付けることは絶対にしないでください。

※ZOOMでスムーズな視聴をするためには、ZOOMアプリのインストールを推奨します。既にインストール済みの方も、セキュリティ向上のため最新版に更新してください。また、ZOOMを利用して研究例会に接続する際に発生する通信料は個人負担です。Wi-Fi(ワイファイ)や通信量制限がない契約以外で接続していますと、通信料が発生したり、パケット(データ通信量)を大きく消費しますのでご注意ください。

2024/2/13 掲載 : 例会委員会